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総合的な探究の時間で地域課題を扱う

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「地域課題をテーマにしたが、調べてまとめるだけで終わってしまった」「生徒の提案が“ポスターをつくる”に落ち着いてしまう」「外部と連携したいが、どこへどう頼めばよいか分からない」という先生もいるでしょう。

議場で行われた模擬選挙で、演台に立って話す生徒

総合的な探究の時間で地域課題を扱うテーマ設定から発表までの設計

総合的な探究の時間で地域課題を扱う学校は増えています。身近で、資料が手に入り、当事者にも会いやすいからです。

一方で、単元が終わったときに「調べてまとめただけだった」と感じる先生は少なくありません。

生徒の最終提案が、ポスター、SNS発信、イベント開催に集まりやすいのも、よく聞く悩みです。

この記事では、地域課題の探究が調べ学習で止まる構造と、生徒が意思決定まで経験できる設計を紹介します。

この記事は、こんな方に向けています

  • 総合的な探究の時間で地域課題を扱う中学校・高校の教員
  • テーマ設定の段階で生徒が動けなくなる状況に悩んでいる方
  • 提案が広報や啓発に偏ってしまう理由を知りたい方
  • 行政・議会との連携を検討している方
  • 探究の評価をどう設計するか迷っている方
  • 主権者教育と探究を接続したい方

調べ学習で止まるのは、決める場面が無いから

地域課題の探究は、多くの場合この順で進みます。

  1. 地域の課題を調べる
  2. 現状をまとめる
  3. 解決策を考える
  4. 発表する

一見すると自然な流れですが、ここには選ばなければならない場面がありません。

課題は与えられ、解決策は自由に考えてよく、発表すれば単元は終わります。誰かと対立することも、限られた資源を配分することもないため、提案は「良いこと」に落ち着きます。

ポスターやSNS発信が選ばれるのは、費用も権限も要らず、誰も反対しないからです。

段階調べ学習型意思決定型
課題与えられる複数から選ぶ
制約特に無い予算・期間・対象が決まっている
他者資料の中にいる教室にいて反対する
結論各自の提案一つに決める
終わり方発表選択と、選ばなかった理由

テーマは「困っている人」から立てる

テーマ設定でつまずくとき、多くの場合は分野から入っています。防災、環境、高齢化、商店街——分野は大きすぎて、どこから調べればよいか分かりません。

そこで、分野ではなく人から入ります。

  • この地域で、いま困っているのは誰か
  • その人は、いつ、どこで困っているか
  • 困っている状態が続くと、何が起きるか
  • 誰が決めれば、それを変えられるか

最後の問いが重要です。「誰が決めれば変わるか」を調べると、生徒は自然に自治体の仕組み、予算、条例、議会に行き当たります。

議場に集まり、地域の課題について議論する生徒たち

分野から入ると資料集めになり、人から入ると意思決定の構造に届きます。

制約を先に置く

生徒に自由に考えさせると、提案は理想論になります。制約が無いからです。

単元の早い段階で、次の3つを与えます。

  • 予算——使える金額の上限(実際の自治体の事業規模を参考にする)
  • 期間——いつまでに効果を出すか
  • 対象——誰のための施策か。全員は選べない

制約があると、生徒は初めて比べる必要に迫られます。同じ100万円を高齢者に使うのか子どもに使うのか、という問いは、調べただけでは答えが出ません。

反対されない案は、鍛えられない

意思決定を経験させるうえで、いちばん効くのは他者から質問される場をつくることです。

教室内で提案を比較し、投票で一つに決める形にすると、生徒は自分の案を守るために根拠を集め直します。

TEIGEN JPが足立区で実施している「モギ区長選」は、この構造を丸ごと体験にした事業です。参加者は次の順で進みます。

  • 地域課題を分析する
  • 政策を立案する
  • 立候補する
  • 選挙公報と演説をつくる
  • 議員や参加者と熟議する
  • 政策を比較して投票する

足立区役所・区議会・教育委員会・選挙管理委員会と共創して実施しており、2025年の開催では中高生30名が参加し、区議会議員11名が協力しました。

議員から受ける質問は、資料には載っていません。「その財源はどこから持ってくるのか」「反対する住民にはどう説明するのか」——この種の質問に答えた経験が、提案を変えます。

演台に立ち、政策について話す生徒

学校の時間割に収めるには

探究の時間は、まとまった時数を確保しにくいのが実情です。

単元全体を組み替えなくても、意思決定の場面だけを差し込む方法があります。

使える時数差し込む場面
1コマ制約つきで案を比較し、投票で一つに決める
2コマ政策立案と、他者からの質問への応答
4コマ課題分析から立候補・熟議・投票までを通す

TEIGEN JPの出前授業は、中学校・高校向けに2〜4コマで実施しています。費用は1回あたり3〜5万円(+交通費・会場費は実費)です。1コマしか確保できない場合は、授業ではなく講演としてお受けしています。

学校側にお願いするのは、会場と日程の調整、事前アンケートの配布です(当日資料の印刷をお願いする場合があります)。教材・進行・投票箱は当団体が持ち込みます。

中立性は、扱う対象で担保する

地域課題を扱うと、政治的中立性を心配される先生がいます。

TEIGEN JPは、実在の政党・候補者・争点の賛否は扱いません。生徒が立案した政策どうしを比較する形にしているため、現実の政治的対立を教室に持ち込まずに、意思決定の構造だけを体験できます。

組織としても、特定の政党・候補者を支持または反対せず、投票先の誘導を行わない方針を公開しています。

中立性の考え方については、学校で政治を扱うときの中立性の記事にまとめています。

評価は、結論ではなく過程で見る

探究の評価が難しいのは、提案の良し悪しを採点しようとするからです。

意思決定型の設計にすると、評価できる観点が増えます。

  • 課題を、誰の問題として定義できたか
  • 制約のもとで、何を諦めたか
  • 反対意見に、どう応答したか
  • 選ばなかった案を、説明できるか
  • 決めた後に、考えが変わった点はあるか

いずれも、提案書の完成度ではなく過程に現れます。最終発表だけでなく、途中の記録を残しておくと評価しやすくなります。

学校・教育委員会からのご相談は、公式サイトの窓口で受け付けています。年度の途中でも、実施時期が決まっていない段階でも構いません。

よくあるご質問

探究の時間が年間で数コマしかありません。それでも意思決定まで扱えますか。
扱えます。単元全体を組み替えなくても、制約を与えて案を比較し、投票で一つに決める場面を1コマ差し込むだけで、生徒の提案のつくり方は変わります。時数が増えるほど、立案から熟議までを通せるようになりますが、まず「選ばなければならない」経験を1回入れることが効きます。
生徒の提案が、ポスターやSNS発信ばかりになってしまいます。
予算・期間・対象という制約が与えられていない可能性があります。制約が無いと、費用も権限も要らず誰も反対しない案が選ばれます。実際の自治体の事業規模を参考にした金額の上限を先に置き、「全員のためになる案は選べない」条件にすると、比較が必要になります。
行政や議会に連携をお願いしたいのですが、学校から依頼してよいものでしょうか。
依頼して構いません。ただし、最初から共催を求めるより、助言、担当部署の紹介、当日の質問役など、複数の関わり方を分けて相談するほうが実現しやすくなります。行政への相談の進め方は、自分の街で模擬選挙を開くための記事にまとめています。
地域課題を扱うと、政治的に偏った授業になりませんか。
実在の政党・候補者・争点の賛否を扱わなければ、偏りは生じにくくなります。生徒が立案した政策どうしを比較する形にすると、現実の政治的対立を持ち込まずに意思決定の構造だけを体験できます。当団体も、特定の政党・候補者を支持または反対しない方針を公開しています。