学校の掃除の時間を、学びに変える小学校の清掃指導の設計
掃除の時間は、ほとんどの小学校に毎日あります。時間割にも学級経営にも組み込まれていて、なくなることはまずありません。
それなのに、掃除の時間について書かれた指導案は、国語や算数に比べて驚くほど少ないのが実情です。
その結果、掃除は「決まっているからやること」になりやすく、指導は「静かにやりなさい」「隅までやりなさい」という声かけに寄っていきます。
この記事では、掃除の時間が作業になってしまう構造と、それを学びへ変えるための設計を紹介します。
この記事は、こんな方に向けています
- 掃除の時間が当番作業になっていると感じている学級担任
- 一生懸命やる児童とやらない児童の差に悩んでいる方
- 掃除の意味を、子どもに伝わる言葉で説明したい方
- 掃除を学級経営や道徳と結びつけたい方
- 清掃活動を地域や公共の話につなげたい方
- 外部講師による掃除の授業を検討している方
掃除が作業になるのは、目的が語られないから
学校の掃除には、少なくとも3つの異なる目的が同時に入っています。
| 目的 | 中身 | 評価されやすさ |
|---|---|---|
| 環境の維持 | 教室を使える状態に保つ | 高い(見ればわかる) |
| 技能の習得 | 道具の使い方、手順、安全 | 中くらい |
| 公共心の育成 | 自分の場所を自分で整える態度 | 低い(見えにくい) |
このうち、日々の指導で言葉になるのはほとんど「環境の維持」です。床が汚れている、ゴミが残っている、時間内に終わらない——目に見えるものだけが話題になります。
いちばん時間をかけて育てたい3番目が、いちばん語られない。ここに、掃除が作業へ寄っていく原因があります。

児童の側から見ると、掃除は「終わらせるもの」になります。早く終われば自由時間が増えるので、丁寧にやる子ほど損をする構造さえ生まれます。
ナゼ?掃除をするのかを、最初に問う
指導の順番を変えるだけで、掃除の時間の意味は変わります。
多くの学級では、掃除は「やり方」から始まります。ほうきの持ち方、雑巾の絞り方、担当場所の割り振り。技能から入るのは自然ですが、これだけだと目的は最後まで語られません。
そこで、最初に問いを置きます。
この問いは、答えを教えるためではなく、子どもが考えるために置きます。
海外の学校では、清掃を業者が担うことが多く、児童・生徒が自分たちの空間を自分たちで整える日本の学校清掃は、世界的に見ると珍しい教育文化です。TEIGEN JPには、ニュージーランドやカナダなど海外での教育と日本での教育の両方を経験したメンバーがいます。
「よその国ではどうしているか」を知ると、毎日やっていることが当たり前ではなくなります。当たり前でなくなった瞬間に、はじめて理由を考えられるようになります。
掃除を、いちばん身近な社会参加として置く
自分の教室を整えることは、子どもが最初に経験できる「公共への貢献」です。
まちの清潔さや景観は、誰か特別な人が守っているのではなく、一人ひとりの行動が守っています。掃除は、その関係をいちばん短い距離で体験できる場です。
そのため、指導では次の3つを分けて扱います。
- 自分の場所——机、ロッカー、自分が使ったもの
- みんなの場所——教室、廊下、階段、トイレ
- まちの場所——通学路、公園、地域の施設
自分の場所は、やって当然と感じられます。みんなの場所は、やらなくても自分だけは困りません。まちの場所は、やらなくても誰にも気づかれません。
この線引きを子どもと一緒に確かめると、掃除の時間の会話が「終わったか」から「どこまでを自分の場所と思えるか」に変わります。
学級で試せる、小さな設計
大がかりな準備をしなくても、明日から変えられることがあります。
1. 掃除の前に30秒だけ問いを置く
「今日はどこを、誰のために整えますか」と一言だけ添えます。毎日でなくてよく、週に一度でも効果があります。
2. 見えにくい場所を意図的に割り当てる
人目につかない場所を担当した児童の仕事は、成果が見えません。だからこそ、そこで手を抜かなかったことを言葉にして返します。
3. 技能を「教える機会」に変える
雑巾の絞り方や道具の使い方を、上級生から下級生へ、あるいは児童どうしで教え合う形にします。教える側に回ると、手順の理由を説明する必要が生まれます。
4. 振り返りを、感想ではなく事実で書かせる
「がんばりました」ではなく、「どこを、どのくらいの時間、どうやって整えたか」を書かせます。事実で書くと、次に改善する点が自分で見えます。
5. 掃除の話を、地域の話につなげる
ポイ捨て、落書き、公園の使われ方など、身近な地域の話題を一度だけ取り上げます。教室の掃除と地域の景観が、同じ話だと気づく子が出てきます。
外部の授業を入れるという選択
学級担任だけで掃除の意味づけを続けるのは、簡単ではありません。毎日の指導のなかで、目的を語り直す時間はなかなか取れないからです。
そこで、年に一度だけ外部の授業を入れて、意味づけをまとめて行う方法があります。
TEIGEN JPは、株式会社ダスキンの協力のもとカリキュラムを開発した小学校向け出前授業「地域をまもれ!おそうじ隊」を実施しています。2025年12月に足立区立足立小学校で初開催しました。
対象は小学校で、学年は問わず、1コマで完結します。授業は4つの段階で構成しています。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 導入 | ナゼ?掃除をするのかを問う。世界の学校と日本の学校の違いを知る |
| 体験 | 清掃のプロの知見にもとづく方法を、実際に手を動かして学ぶ |
| 対話 | ポイ捨てや景観を題材に、自分たちのまちを守るとは何かを話し合う |
| 宣言 | 学んだことを自分の言葉にし、教室と地域での行動につなげる |
技能だけを教える授業ではなく、掃除を通じて「自分もまちをつくる一員である」という当事者意識を育てることを目的に設計しています。
授業を担当するのは高校生・大学生です。教員でも保護者でもない、少し先を歩く世代が語ることで、子どもが自分ごととして受け取りやすくなります。
一度の授業で終わらせないために
外部の授業は、意味づけをまとめて行うには有効ですが、それだけでは日常に戻ります。
授業の後に、学級で続けられる形にしておくことが大切です。
- 授業で子どもが書いた「宣言」を教室に残す
- 掃除の前の一言を、宣言の言葉から引く
- 学期に一度、宣言を見返して書き足す
- 地域清掃や行事と結びつける
学校・教育委員会からのご相談は、公式サイトの窓口から受け付けています。実施の可否や時期が決まっていない段階でも構いません。