「模擬選挙をやってみたいけれど、2コマで足りるのだろうか」「4コマもらえたら、逆に何を入れればいいのだろう」——授業設計のご相談で、いちばん多くいただく質問です。
結論から言えば、大切なのは活動の数ではありません。今回は、モギ区長選を運営してきた経験をもとに、2コマ・4コマそれぞれの組み立て方と、削ってよいもの・削ってはいけないものをご紹介します。

模擬選挙が「投票箱を使う授業」で終わるとき
模擬選挙では、演説を聞き、投票用紙へ記入し、投票箱へ入れる場面が目立ちます。しかし、投票は意思決定の最後の工程です。その前に、次の過程があります。
- 課題を知る
- 誰が困っているかを考える
- 解決策を政策にする
- 複数の政策を比較する
- 質問や反対意見を受ける
- 判断を修正する
- 自分の理由で選ぶ
この過程を省き、候補者役の話を聞いてすぐに投票すると、話し方や印象で選ぶ授業になりやすくなります。
TEIGEN JPの「モギ区長選」では、参加者が地域課題を分析し、政策を立案し、立候補し、選挙公報と演説をつくり、熟議したうえで投票します。2025年の開催には中高生30名、区議会議員11名が参加しました。特徴的なのが、自分の政策を高齢者、子育て世帯、事業者など、別の立場から再検討する「パラダイムチェンジタイム」です。
模擬選挙の価値は、最初から正しい政策をつくることではありません。自分の政策にも見落としがあると気付き、考え直せることにあります。
2コマでは、一つの問いを最後まで考える
2コマの授業で避けたいのは、4コマ分の活動を半分の時間へ押し込むことです。2コマでは、扱う地域課題を絞り、詳しい調査や長い選挙公報よりも、「考える、伝える、比較する、選ぶ」という流れを守ります。
| 時間 | 主な活動 | 生徒が行うこと |
|---|---|---|
| 1コマ目前半 | 課題の提示 | 状況と関係者を整理する |
| 1コマ目後半 | 政策立案 | 解決策、対象、方法を考える |
| 2コマ目前半 | 政策発表・質疑 | 政策の違いと弱点を知る |
| 2コマ目中盤 | 立場を変えた検討 | 別の人への影響を考える |
| 2コマ目後半 | 投票・振り返り | 判断理由を言葉にする |
2コマで削る候補は、課題の数、調査資料の量、候補者や政策グループの数、選挙公報の文字量、演説時間、装飾や発表準備です。
反対に、削るべきでないのは、政策を比較する時間と、投票後の振り返りです。投票結果だけを発表して終わると、「ナゼ?選んだのか」「他者との対話で判断が変わったか」が残りません。得票数ではなく、判断の過程を授業の成果として扱います。
4コマでは、政策を修正するところまで扱う
4コマの利点は、説明や発表を長くできることではありません。最初につくった政策を、質疑や他者の立場を踏まえて修正できることです。
| コマ | 主な活動 | 学習の焦点 |
|---|---|---|
| 1コマ目 | 地域・学校課題の分析 | 事実と印象を分ける |
| 2コマ目 | 政策立案・選挙公報 | 対象、方法、条件を具体化する |
| 3コマ目 | 演説・質疑・熟議 | 政策の違いと弱点を見つける |
| 4コマ目 | 立場変更・修正・投票 | 政策を問い直して選ぶ |
たとえば、あるサービスを無料にする政策を考えた場合、「良い案か悪い案か」だけを話すのではありません。
- 誰が利用するのか
- 誰が費用や実務を負担するのか
- 利用しない人はどう感じるか
- 継続するために何が必要か
- 他の政策より優先する理由は何か
- 実施によって別の問題が生じないか
こうした問いを受けると、最初の案をそのまま守ろうとする生徒もいます。授業側は、考えを変えることを敗北として扱わないようにします。TEIGEN JPの合言葉「Always Be a Questioner.」は、他人だけでなく、自分の答えも問い直す姿勢です。4コマでは、この問い直しに時間を使えます。

2コマと4コマは、授業目的から選ぶ
授業時数が多いほど、必ず良い授業になるわけではありません。目的と設計が合っているかが重要です。
| 授業で重視すること | 適した構成 |
|---|---|
| 政策を考えて投票する一連の流れ | 2コマでも可能 |
| 複数の立場から政策を見る | 2コマでも簡略化して可能 |
| 調査から政策を組み立てる | 4コマが適する |
| 質疑を受けて政策を修正する | 4コマが適する |
| 選挙公報や演説を推敲する | 4コマが適する |
| 1コマしか確保できない | 模擬選挙ではなく講演 |
判断するときは、次の三つを確認します。
生徒に何を持ち帰ってほしいか
選挙の仕組みを知るのか、政策をつくるのか、異なる意見と向き合うのか。目的を一つに絞ります。
何を事前学習で扱えるか
地域課題や選挙制度を学校側で扱える場合、出前授業では政策立案と熟議に時間を使えます。
何を無理に入れないか
模擬選挙らしさを演出するために、タスキ、装飾、長い演説へ時間を使うと、考える時間が減ります。形式よりも、生徒が判断する時間を守ります。
候補者役だけが成長する授業にしない
模擬選挙では、演説する候補者役が目立ちます。一方で、他の生徒が投票を待つだけになることがあります。グループで政策をつくる場合は、役割を分けます。
- 地域課題や資料を確認する
- 政策の対象者を整理する
- 実現方法を考える
- 選挙公報を書く
- 演説を担当する
- 他グループへ質問する
- 質疑を記録する
- 政策を修正する
代表者一人の話す力ではなく、グループ全体の政策形成を授業の対象にします。また、得票数をそのまま成績にすると、政策内容より知名度や話し方が評価される可能性があります。評価する場合は、課題と政策がつながっているか、政策の対象者が明確か、別の立場への影響を考えたか、質問を受けて政策を見直したか、自分の投票理由を説明できるか、といった観点が考えられます。
模擬選挙で避けたい四つの詰め込み
授業時間が限られると、活動を急いで進めたくなります。しかし、次の詰め込みは学びを薄くします。
課題を詰め込みすぎる
多くの地域課題を扱うと、政策が抽象的になります。2コマでは一つの問いに集中します。
候補者を増やしすぎる
発表数が増えるほど、比較や質疑の時間が減ります。
説明を長くしすぎる
制度説明を丁寧にしすぎると、生徒が考える前に授業が終わります。必要な情報は教材へ移します。
振り返りを最後の余り時間にする
振り返りは、投票結果の感想ではありません。自分が何を根拠に選び、どこで考えが変わったかを確認する時間です。
TEIGEN JPの学校向けプログラムは2〜4コマで、2日間への分割も可能です。対象学年、人数、授業目的、確保できる時間を整理してご相談ください。