「生徒会選挙が、どうしても人気投票になってしまう」——生徒会を担当する先生から、よく伺うお悩みです。
でも実は、生徒が真剣に考えていないわけではないことが多いのです。足りないのは、比較するための材料と時間。今回は、模擬選挙の設計を生徒会選挙の前後にどうつなげるかを、順を追ってご紹介します。

生徒会選挙が「知っている人を選ぶ行事」になりやすい理由
生徒会選挙では、立候補者が公約を掲げ、演説を行います。それでも、投票する生徒が政策の違いを十分に理解できないことがあります。
- 公約が「より良い学校にする」など抽象的
- 候補者ごとに公約の書き方が異なる
- 演説以外に質問する機会がない
- 実現可能性を確認できない
- 候補者の知名度や人間関係が判断に影響する
- 投票後に判断を振り返る機会がない
これは、生徒が真剣に考えていないからとは限りません。比較するための情報と時間が不足している場合があります。
模擬選挙を接続する目的は、生徒会選挙を国政選挙のように見せることではありません。候補者の印象だけでなく、学校課題と提案を比較して選べる状態をつくることです。TEIGEN JPのモギ区長選では、参加者自身が課題を分析し、政策を立案し、演説と熟議を経て投票します。この設計を生徒会選挙へ応用する場合も、投票箱より前の過程が重要です。
候補者が出る前に、学校課題を整理する
候補者へ公約を求める前に、学校内にどのような課題があるかを生徒全体で考えます。ここで大切なのは、個人的な希望を否定することではありません。希望を、他の生徒にも関係する課題として検討できる形に変えることです。
- 学校生活で変えたいことを出す
- 誰が困っているかを確認する
- 現在の状況やルールを調べる
- 生徒会が扱える範囲かを考える
- 教職員や他の関係者との調整が必要かを考える
- 複数の解決策を比べる
たとえば、「行事を増やしたい」という意見が出たとします。そのままでは公約として判断できません。どのような行事か、誰が参加できるのか、準備を誰が担うのか、授業や部活動へ影響しないか、会場や安全面をどうするか、任期中に実施できるか。この問いを通じて、希望を政策へ変えます。
TEIGEN JPの「問いは、社会を動かせる。」という考え方も、思いついた答えをそのまま通すことではありません。違和感を問いとして言葉にし、他者と検討できる提案へ変えることです。
公約を比較できる共通形式をつくる
候補者ごとに公約の形式が違うと、文章量、デザイン、話し方が評価へ影響します。完全に同じ条件にすることはできませんが、共通項目を設けることで、提案を比較しやすくなります。
選挙公報の共通項目
- 解決したい学校課題
- その課題で困っている人
- 提案する取り組み
- 実施までの手順
- 必要な協力
- 想定される課題
- 任期中に目指す到達点
「学校を明るくする」「生徒の声を聞く」という表現も、具体化を求めます。たとえば、生徒の声を聞くのであれば、意見箱、アンケート、対話会など、どの方法を使うのか。集めた意見を誰が確認し、どのように回答するのか。実施できない要望をどう扱うのか。ここまで示されると、投票する側も比較できます。
候補者に完成された政策を求めすぎる必要はありません。重要なのは、分からないことや難しいことを隠さず、どのように検討するかを示せることです。
全候補者への共通質問で、演説の差を補う
演説だけでは、候補者が準備した内容しか分かりません。一方、自由な質疑だけにすると、質問の難易度や厳しさが候補者ごとに異なる可能性があります。そこで、全候補者へ同じ共通質問を用意します。
- その政策で、誰の学校生活が変わりますか
- 実施するために、誰と相談しますか
- 反対する人には、どのように説明しますか
- 任期中に実施できない場合、何を優先しますか
- 別の立場の生徒には、どのような負担がありますか
- 公約を変更する必要が生じた場合、どう伝えますか
質問は候補者を困らせるためのものではありません。提案を具体化し、投票する側の判断材料を増やすために行います。質問を事前に共有すれば、即答が得意な生徒だけが有利になることも防げます。当日は共通質問に加え、選挙公報の内容に関する個別質問を扱う方法があります。

公約を別の立場から問い直す時間を入れる
TEIGEN JPのモギ区長選では、「パラダイムチェンジタイム」を設けています。自分の政策を、高齢者、子育て世帯、事業者など、別の立場から再検討する時間です。生徒会選挙へ接続する場合は、学校内の立場に置き換えます。
- 新入生
- 最上級生
- 部活動に所属している生徒
- 部活動に所属していない生徒
- 行事を運営する生徒
- 静かな環境を必要とする生徒
- 教職員
- 施設管理を担う立場
たとえば、昼休みに音楽を流す公約があるとします。音楽を楽しみたい生徒だけでなく、静かに過ごしたい生徒、放送設備を管理する担当者、授業準備をする教員の立場から見直します。
問い直した結果、公約を修正しても構いません。選挙では、最初の主張を変えることが弱さと受け取られる場合があります。しかし、情報や他者の意見を受けて政策を更新することは、意思決定に必要な力です。
投票先ではなく、判断基準を振り返る
実際の生徒会選挙では、誰に投票したかを提出させる必要はありません。投票の秘密を守りながら、何を基準に判断したかを振り返ります。
投票前に書くこと
- 学校で重要だと考える課題
- 公約を比較するときに重視する点
- 候補者へ確認したいこと
投票後に書くこと
- どの情報を重視したか
- 演説や質疑で考えが変わったか
- 実現可能性と必要性をどう比べたか
- 知名度や人間関係に影響されたと感じるか
- 当選しなかった公約にも残す価値があるか
投票結果だけで終わると、落選した候補者の提案は消えてしまいます。しかし、複数の候補者が共通して挙げた課題や、質疑で見つかった論点は、選挙後の生徒会活動へ引き継げます。当選者がすべての答えを持つのではなく、選挙を通じて集まった問いを、次の活動へ残します。
生徒会選挙を一日で終わらせない
生徒会選挙の事前学習と事後学習を設計する際は、次の事項を確認します。
- 候補者の公約を比較できるか
- 候補者全員に公平な質問機会があるか
- 投票する生徒が受け身になっていないか
- 候補者個人への攻撃を防げるか
- 投票の秘密が守られるか
- 落選した生徒への配慮があるか
- 選挙後に公約や課題を引き継げるか
- 生徒会で決められる範囲が明確か
模擬選挙の設計を接続する目的は、選挙を派手にすることではありません。生徒が、自分たちの学校について問い、提案を比べ、自分の一票を判断として使うことです。
生徒会選挙との接続を検討する場合は、選挙日程、対象学年、確保できる授業時間を整理してご相談ください。