「区役所に連絡してみたいけれど、高校生の話を聞いてもらえるのだろうか」——最初の一歩が、この不安で止まってしまう人は少なくありません。
でも、安心してください。行政は、準備をして訪ねてきた相手にはきちんと向き合ってくれます。今回は、最初の資料のつくり方から、面談で聞くこと、断られたときの考え方まで、行政への相談の進め方をご紹介します。

行政への相談は、企画を認めてもらう試験ではない
模擬選挙を地域で行う場合、行政、議会、教育委員会、選挙管理委員会などの協力を考えることがあります。企画者側は、共催、後援、会場、広報、投票箱の貸与などを期待します。しかし、行政側は、企画の公共性、公平性、安全性、中立性、役割分担を確認しなければ判断できません。
最初の面談を「企画を認めてもらう場」だと考えると、良い部分だけを強く説明し、難しい点を隠したくなります。しかし、本当に必要なのは、企画の穴を見つけることです。初回相談の目的は、次のように置きます。
- 担当部署が合っているか確認する
- 行政が関与できる範囲を知る
- 公平性や安全面の懸念を聞く
- 必要な手続と決裁期間を確認する
- 企画側だけでは気付けない論点を知る
- 次に持参する資料を決める
TEIGEN JPのモギ区長選は、足立区役所、区議会、教育委員会、選挙管理委員会と共催しています。2025年には中高生30名が参加し、区議会議員11名が協力しました。ただし、この結果だけを見て、「良い企画書を出せばすぐに共催してもらえる」と考えることはできません。行政との連携では、完成した結果より、そこへ至る調整の過程に実務上の価値があります。
最初の資料は、長い企画書より一枚の判断材料
最初から数十ページの企画書をつくる必要はありません。情報が多すぎると、相手が何を判断すべきか分からなくなります。一枚の概要に次を入れます。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 背景 | 地域で何を問題だと感じたか |
| 目的 | 参加者に何を経験してほしいか |
| 対象 | 年代、想定人数、地域 |
| 内容 | 参加者が実際に行うこと |
| 時期 | 開催希望時期と準備期間 |
| 主催者 | 団体名、責任者、連絡先 |
| 中立性 | 政党・候補者をどう扱うか |
| 安全 | 未成年、個人情報、写真等への対応 |
| 相談事項 | 行政に何を聞きたいか |
| 未決定事項 | 現時点で決まっていないこと |
企画内容は、動詞で書きます。TEIGEN JPのモギ区長選であれば、参加者は地域課題を分析し、政策を立案し、立候補し、選挙公報と演説をつくり、熟議のうえで投票します。「主権者意識を高めるイベント」とだけ書くより、参加者が何をするかが分かります。
行政への依頼も、「協力してください」ではなく分けて記載します。企画への助言、担当部署の紹介、地域データの提供、会場についての相談、投票箱等の備品、学校への周知、職員の参加、議員との調整、共催または後援の可能性。すべてを同時に求める必要はありません。
相談先ごとに、聞く内容を変える
模擬選挙に関係しそうな機関へ、同じ依頼文を一斉に送ると、相手の役割と合わない可能性があります。
| 相談先 | 主に確認する内容 |
|---|---|
| 選挙管理委員会 | 選挙啓発、投票手続、備品、中立性 |
| 教育委員会 | 教育目的、学校との接続、対象年代 |
| 自治体の担当部署 | 地域課題、会場、庁内調整 |
| 議会・議員 | 政策への質問、熟議、地域の実情 |
| 学校 | 参加者、事前学習、引率、日程 |
| 公共施設 | 会場条件、設備、安全管理 |
どこへ連絡すべきか分からない場合は、代表電話や問い合わせ窓口から、企画概要を伝えて担当部署を確認します。
最初の連絡では、自分の年齢を過度に強調して配慮を求める必要はありません。一方で、未成年者だけでは判断できない契約、会場、金銭、安全管理があることは隠しません。「高校生なのにここまで考えています」と評価してもらうことが目的ではありません。行政が判断できる情報を、相手の立場に合わせて渡すことが重要です。

初回面談では「何が難しいか」を先に聞く
面談では、企画の魅力だけでなく、相手が難しいと考える点を聞きます。
制度と名義
- 共催、後援、協力は何が違うか
- 名義使用にはどのような決裁が必要か
- 申請から判断まで、どの程度の準備期間が必要か
- 行政職員や議員が参加できる範囲はどこまでか
内容と中立性
- 実在する政党や候補者を扱わない設計で問題はないか
- 地域課題を教材化する際の注意点は何か
- 行政データを使用するとき、出典をどう示すか
- 議員や職員へどこまで質問できるか
会場と安全
- 使用可能な施設はあるか
- 未成年者の利用条件は何か
- 投票箱等を借りられるか
- 保護者同意、写真、個人情報について何が必要か
- 事故や緊急時の責任分担をどうするか
特に有効なのが、「この企画について、行政として最も判断しにくい点はどこですか」という質問です。TEIGEN JPの合言葉「Always Be a Questioner.」は、相手を説得するために質問することではありません。自分たちの企画についても、見落としや都合のよい前提がないかを問い直す姿勢です。
議員に参加してもらう場合は、役割を先に決める
模擬選挙へ議員が参加すると、地域課題や政策について具体的な質問を受けられます。一方で、特定の政党や候補者の政治的発信の場にならない設計が必要です。
TEIGEN JPは、特定の政党、政治団体、候補者を支持または反対しません。授業や企画内で、実在する政党、候補者、争点への賛否も扱いません。議員へ依頼する際は、次の点を明確にします。
- 参加者がつくった政策へ質問する
- 特定の結論へ誘導しない
- 政党や選挙活動の広報を目的にしない
- 参加者の政策を否定するのではなく、実現条件を問う
- 企画者側が時間と進行を管理する
- 参加する議員の範囲や依頼方法を検討する
議員を「権威のある審査員」として置くと、参加者が正解を当てる場になりかねません。政策を問い直す対話相手として位置付けます。
断られた理由を、企画全体への否定にしない
行政から共催や会場利用を断られることはあります。そのとき、「高校生だから相手にされなかった」「企画に価値がなかった」とすぐに結論付けないことが重要です。何が難しかったのかを分けます。
- 共催名義
- 後援名義
- 会場利用
- 備品貸与
- 職員の参加
- 議員との調整
- 広報
- 実施時期
- 安全管理
- 中立性
- 予算
たとえば、共催は難しくても、企画への助言や担当部署の紹介は可能かもしれません。庁舎は使えなくても、公共施設や学校、オンラインで実施できる場合があります。ただし、安全性や公平性について重大な問題を指摘された場合は、場所を変えるだけでなく企画そのものを見直します。
行政の協力を得ることが最終目的ではありません。参加する10代に、地域を問い、政策を考え、他者と意思決定する機会をつくることが目的です。
TEIGEN JPは、自分の街でモギ区長選やおそうじ隊を始めたい10代に、30分・無料・オンラインの相談を通年で行っています。